
●ナローボートの操縦
イギリスの運河ではボート免許は不要。30分も舵を握っていれば、ボートの操作にもかなり慣れてくる。
しかし、ボートには陸上の乗物にはない、独特の動きがある。まず、ティラー(舵を操作する棒)を操作してから船首が動き出すまで、わずかなタイムラグがある。スクリューの水流を舵が感じとり、それを船体に伝えるまでに時間がかかるために起こる現象だ。言い換えれば、曲がるときは、曲がるべき地点の少し前でティラーを操作する必要がある。
次が「アテ舵」。たとえば左旋回の場合、旋回が終わり、船体を再びまっすぐに戻そうとティラーを船体に対して平行にしても、船首をさらに左に向けてしまうのだ。ボートは、いったん曲がりはじめると、慣性でどんどん曲がろうとしてしまうため、ティラーをまっすぐに戻しただけでは不十分なのだ。
そこで、アテ舵といって、旋回が終了した時点で逆方向にちょっと舵を切る。先の左旋回の場合、ティラーを右に切って船体を旋回させ、行くべき方向に船首が向いたら、ティラーを逆方向にちょっとだけ切るのである。
慣れてきたら、スロットルとのコンビネーションをうまく使おう。ナローボートのエンジンには変速機がついていない。つまり、スロットルをふかせばふかすほど、スクリューからは強い水流が発生する。舵は、その水流を受けて船体に動きを伝えている。
結果、より強い水流を起こすことによって舵の効きも鋭くなる。つまり、スロットルを調節することによって、同じ角度のティラーの操作でも、曲がる角度は違ってくるのだ。スロットルを上げれば上げるほど、ボートは急旋回をはじめる。
この操作は、急カーブやジャンクション(運河の交差点)での旋回で有効である。車の場合は、カーブや交差点では減速して曲がるのが原則だが、ボートの場合、逆にエンジンをふかしながら曲がるのである。
最後に、原理的なことをひとつ。船というものは、「重心」を中心にして旋回するものだそうだ。だから、船首ばかりでなく、重心が今どこにあるかを確認しながら旋回するとより上手に曲がることができるだろう。ちなみにナローボートの重心は、屋根にセンターロープが取り付けられている場所である。